はじめに。「おすすめ」は少ないことに意味がある!?

アリア
アリア。天才かもしれん

レイ
どうした突然
ここはアリアの大好きなプリンの専門店。
行列の並ぶその先からは、カラメルの甘い匂いがほのかに漂います。
この幸せをくすぐるような香りをひとたび嗅いでしまえば、人々はもう行列から離れることはできません。

アリア
あれ見て
アリアはプリンが陳列されたショーケースを指差しました。

アリア
みんな牛乳プリンを選んでいるの!
まるで公園の砂場から宝物を掘り当てたように「大発見!」と喜びます。
たしかに牛乳プリンばかりが異常な速度でショーケースから数を減らしていきますが、それもそのはずです。
だって、牛乳プリンと書かれた名札のすぐ横には『おすすめ!』と
でかでかと書かれたポップがくっついていたのですから。

アリア
でもねでもね。
このお店で一番おいしいのはイチゴプリンなんだよ!
アリアはこのお店に来ると決まってイチゴプリンを頼みます。
それはイチゴムースをからめた桜色のプリンに、カットされたイチゴを乗っけたプリンです。

レイ
おすすめとあるから、つい選びたくなるんだろうな。人は失敗を避けたがる生き物だから

アリア
そこでアリアは天才のひらめきをした

レイ
聞かせてごらん

アリア
全部のプリンにおすすめと書けばいいんだよ!
そしたら、全部のプリンが牛乳プリンと同じくらい飛ぶように売れるんじゃない? どう? アリア天才?

レイ
どうだろうな。
あえて数を絞るというのも、ときには有効だから

アリア
どうして!?
おすすめがたくさんあったら、みんないろんなおすすめを食べたくならない?

レイ
『ジャムの法則』というのがあるんだ。選択肢が多すぎると人の購買力は低下してしまうんだよ。

アリア
ジャム! 甘そう!

レイ
そうだな。パンに塗るジャムのことだから。
たしかに甘いな。

アリア
ほんとに甘かった……!(冗談だったのに!)
選択肢は多ければ多いほど選択する側にとっては良いことのように思えます。
しかし、選択肢が多すぎると人の脳はかえって選択を諦めてしまい、逆効果になってしまうということが起こりえるのです。
それが「ジャムの法則」でも有名な『選択のパラドックス』なのです。
『ジャムの法則』とは?

アリア
ジャムおしえろ

レイ
『ジャムの法則』な
「選択が増えるほど、人は意思決定が難しくなる」という人間の心理法則のこと。
シーナ・アイエンガー教授がアメリカのスーパーマーケットで行った実験が根拠になっています。
どちらのパターンがより購入されるかを調査
・パターン1:6種類のジャムを並べて売る試食コーナーを設置
・パターン2:24種類のジャムを並べて売る試食コーナーを設置
ジャムの種類 | 立ち寄った客の割合 | 立ち寄った後 購入した客の割合 |
---|---|---|
6 | 40% | 30% |
24 | 60% | 3% |

レイ
実験結果から分かるように、
立ち寄った客の割合は
24種類の試食コーナーの方が多かったけれど
購入までした客の割合は
6種類の試食コーナーの方が多かったんだ

アリア
どうして!?
種類がたくさんの方がいっぱい選べてよさそうなのに!!

レイ
一緒に考えてみようか
どうして選択肢の多さは決断力を奪うのか?

レイ
たしかに選択肢の多さは魅力的だ。
人を呼び込むには効果的かもしれない。
けれど反対に、人に決断をさせるには逆効果になるんだ。

アリア
どうして!?
アリアなら、
たくさんの方から一番いいものを頑張って選ぶけど

レイ
そう。そこなんだ

アリア
なるほど! ここか! (どこだ……?)

レイ
理解が早いな(さすが俺の娘だ)
・『決断疲れを発生させる』
→選択には比較・吟味するプロセスが必要なため、思考力と時間を使う。
選択肢が多くなるほど全部を比較・吟味することが難しくなり、決断できなくなる。
・『損失回避の心理が働く』
→より良い選択があるかもしれないのに「間違った選択をして後悔をしたくない」という心理が働く。

アリア
やはりそうか。(解説たすかった……)

レイ
全部を「おすすめ」にしたら意味がないと分かっただろ?

アリア
たくさんの「おすすめ」から選ぶのは
大変! めんどう! 失敗いや!

レイ
(やはり天才だ!)
ジャムの法則以外にも? 日常に溶けこむ選択の心理

レイ
世の中に売られているものをよく見てみると、
種類が豊富なものは選択肢を減らすために、
「カテゴライズ」されていたり
「パッケージ化」されていたり
といった工夫がなされているものが多い。

アリア
「おすすめ」もそうだよね?

レイ
そのとおりだ。
立ち寄った客が直ぐに「これだ」と
選べるものがあるのは効果的だ。

アリア
プリン屋さん。おそるべし・・・

レイ
『ジャムの法則』だけじゃない。
選択肢の数に関する法則は他にもある。
人間が短期記憶できる物事の数量のこと。7(±2)個と4(±1)個の説があるが、現在は4(±1)個が主流。
段階的な3つの選択肢を提示したとき、人は中間のものを選びやすいという心理効果のこと。

レイ
・WEBサイトの豊富な記事が五つや四つにカテゴライズされていたり
・飲食店でS/M/Lサイズで価格設定がされていたり
選択肢の数にまつわる法則を応用して、
世の中の選択肢の数はコントロールされているものが多い。
全ては人に「選択のストレス」を与えないための工夫だよ。

アリア
商売人おそるべし・・・

レイ
勘違いして欲しくないのは
種類の多さが「ダメ」なのではなく、
選択にかかるストレスをどのように減らすかが
肝だということを理解しておくことだ。

アリア
なんとなく理解した
おわりに。選択の連続の人生で

レイ
人生も同じかもしれんな

アリア
とつぜん壮大になった・・・!

レイ
将来の夢。居住地。信仰。結婚相手。趣味・・・
どれも選択肢は数え切れないほどに多い。
だからこそ人は選択できなくなり、悩む。

アリア
おい。勝手に話すすめるな

レイ
もしかしたら、選択肢に関わる法則を理解しておくことは
選択肢の多いこの時代を生き抜くヒントになるかもしれんな

アリア
終わった・・・!?