娘を歯医者に連れていこうと玄関を出たら、外はざあざあと雨が降っていました。

アリア

ときにパパ。
運命を信じるか?

レイ

だまって傘をもってきなさい

アリア

今日は歯医者に行かないと運命が決めていたのかも

レイ

いや。運命なんてない。
人生とは確率の積み重ねだ

アリア

ほお。根拠を述べよ

娘を歯医者に行かせるために、それっぽい理由を探しましょう。

こうなることは遠い昔から決まっていた。運命なんだ。という台詞がよくありますが、

本当に「未来は全て決まっているのか」そしてそれは「予測可能なのか?」
実はこれらについて科学的に考えられたことがあるのです。

それが『ラプラスの悪魔』という存在なのです。

レイ

『ラプラスの悪魔』
を説明しようか

アリア

ポケ〇ンじゃん

『ラプラスの悪魔』とは?

アリア

「ラプラスの進化」おしえろ

レイ

ポケ〇ンから離れろ
『ラプラスの悪魔』

ラプラスの悪魔とは18世紀のフランスの数学者、ピエール=シモン・ラプラスによって提唱された概念的な存在です。

簡潔に言うならば、「ある時点におけるこの世の全ての状態を完璧に把握しているため、未来に起こる全てを予測できる」とされた架空の存在のことです。

つまり、ピエール=シモン・ラプラスは
ある時点における世界の全ての状態を完璧に把握することができるなら、未来に起こること全ての事柄を計算により導きだせると考えたのです。

未来に起こることを予測できる⇒未来は全て決まっている

これが『決定論』とされる考え方につながっていきます。

そんなラプラスの悪魔の根拠になっているのが、ニュートン力学の存在です。

悪魔はニュートン力学から誕生した

17世紀の科学者、アイザック・ニュートンが確立したニュートン力学により物理学は大きな発展をとげました。

たとえば大砲から放たれた砲弾の軌道、たとえば天体の動き、
この世のあらゆる現象がニュートン力学で説明できるようになりました。
「質量」「形」「位置」「速度」などの物体の初期条件の情報が分かっていれば、その後の物体の動きを計算により導きだせるようになったのです。

ニュートン力学により、少し先の未来の予測であれば、高精度で可能になったのです。

これが「過去のできごとにより、未来のできごとが決定づけられる」という『決定論』の誕生となったのです。

これらの考えをさらに発展させ、誕生したのがラプラスの悪魔

ある時点におけるこの世の全ての状態を完璧に把握している(=全ての物体の初期条件を完璧に把握している)
未来に起こる全てを予測できる(=全てを計算により導きだせる)

というわけなのです。

悪魔は人間の意思決定までも予測可能?

ラプラスの悪魔はなんと人間の意思まで予測することが可能です。

たとえば、あなたが飲み物を飲んだとします。

 ⇒それは喉が渇いたから。
 ⇒喉が渇いたのは汗をかいたから。
 ⇒汗をかいたのはランニングをしたから。
 ⇒ランニングをしたのは肥満解消のため。

このように、理由をさかのぼっていけば、過去のできごとによって今の行動が決まっていることが分かります。

人間は自分の意思で行動を決めているのではなく、過去のできごとによって、行動は既に決まっていると考えられます。

さらには人間の脳はニューロンと呼ばれる神経細胞で構成される原子の集合体であり、つまり物質です。

現在の人間の脳の状態すらも完璧に理解することができる『ラプラスの悪魔』であれば、
ニュートン力学と同じように未来の脳の姿も計算により導きだせてしまうのです。

アリア

ホントに
ぜんぶ運命じゃん

レイ

結論づけるのはまだ早い

ラプラスの悪魔が存在しない理由

現在ではラプラスの悪魔は存在不可能だと言われています。

その理由は・・・

  • 量子力学の登場
  • バタフライ効果

①量子力学の登場

量子力学とは原子レベルのミクロな世界をあつかった物理学のことです。

量子力学はニュートン力学と決定的な違いがあることが分かりました。

それは原子などのミクロな物質は過去も未来も関係なく、完全なランダムで状態が変化するものもあるということです。

ミクロの世界で見ると、未来は確率的に決まってしまうのです。

つまり『ラプラスの悪魔』がどんなに現在の状態を完璧に理解しようと、原子レベルのミクロの世界で未来を予測することは不可能なのです。

②バタフライ効果

バタフライエフェクトとは、ほんの小さな変化がめぐりめぐって最終的に大きな結果を生む現象のことです。

ブラジルでの蝶の羽ばたきがテキサスでトルネードを引き起こすかもしれない。という例え話から『バタフライ効果』と名付けられました。

バタフライ効果は遠い未来であればあるほど、その効果は大きくなります。

実際に、天気予報では明日の天気は高精度で予測できても、一ヶ月後の天気を同じ精度で予測することはできません。

蝶の羽ばたきのような、計算には含められない小さな変化の積み重ねが未来の天気に大きな影響を与えてしまうからです。

まとめ

①量子力学の登場によってミクロの世界では確率的にしか決まらない物質の動きがある。

そんな小さな変化でも、未来へいくほど②バタフライ効果によって大きな変化へと変わっていく。

よって『ラプラスの悪魔』の存在は否定できてしまうのです。

アリア

ぐぬぬ

レイ

歯医者いこうか

アリア

傘もってくる・・・